9月20日(水)残る藁も少なくなってきました
こんばんは。9月20日の集会所での作業の様子を、今回は望月がお伝えします。
今回も前回に引き続き、稲穂を束ねる作業に取り組みました。
穂の状態が良い稲を選び、凧糸で束ねていきます。会員さん曰く、今年の穂は実りが良くなく、穂が少し短いそうです。
25本の束が10束集まったところで、ビニール紐でくくります。なぜビニール紐を使うのかお聞きしたところ、農作業で使う道具であるためではないか、とおっしゃっていました。以前は藁を利用して束ねていたかもしれないとのことで、農作業で使う道具と共に変わってきたのではと推察されます。
本日の作業が終わった段階で、ビニール紐で結えた束を数えてみたところ、34束ありました。
25×10×34=8500 なので、8500本数えたことになります。
まだ数えていない稲もこれだけありますが、かなり減ってきたように思われます。
すみ瓔珞の傘の修復も完了しました。
千日紅の貼り付けが済み、色鮮やかです。
この下に赤茄子や五色唐辛子などが吊るされ、完成後はより色鮮やかになります。材料の出来や状態によって毎年様子が変わるのは、農作物を使用する瑞饋神輿ならではです。
子ども神輿用の真紅も、梅の形に装飾されていました。
白い花の部分は立体感があり、ふわふわしていて可愛らしいです。完成後には、子ども神輿と瑞饋神輿の印象も一層大きく変化しているかと思います。その差異に注目してみるのも楽しみです。
本日はここまで。夜なべは明日も続きます。
9月19日(火)稲を数えて束ねる
こんにちは、今日は中塚がお伝えします。
この日の集会所では、多くの方が稲の選定や稲を束ねる作業に携わっていました。
【写真①】集会所の様子
【写真②】選定を終えた稲
稲の選定作業を終えると、作業は次の段階にうつります。稲を糸で束ねる作業です。束ねる際には、稲穂の先端を揃えるようにします。そして、糸で括ります。括り方は先日紹介した梅鉢の輪っかの括り方と同じでした。
稲穂を数える際に集中が途切れると何本まで数えたのか分からなくなってしまいます。数える作業に入った段階で自然と集会所は静かになっていました。みなさま黙々と作業を進めます。
【写真③】稲穂を糸で括る
【写真④】数を揃え束ねる前の稲
【写真⑤】数を揃え束ねた後の稲
【写真⑥】10束ごとでさらに束ねる
束ねられた稲は、さらに10束ごとに束ねられて、物干し竿に吊るされます。これだけの稲を吊るすとすごい重量になるので、物干しざおには補強用の棒が取り付けられていました。
夜なべも残すところわずか、瑞饋神輿の準備も終盤にさしかかっています。今日はここまで、それでは。
9月16日(土)夜なべ作業も大詰めです
こんばんは。今回は望月が9月16日の夜なべの様子をお伝えします。
今回行われていた作業は、藁の選り分け作業と真紅作りでした。
まずは藁の選り分け。残り日数も少なくなり、他の作業が完了しつつあるため、今回はかなりの大人数で取り組みました。談笑しながら進められます。
作業の終わった稲も増えてきました。
こちらは真紅作りの様子です。
作業の間に挟む休憩の時点でこの状態でしたが、終了時には文字の貼り付けも終わっていました。
これにて4本の真紅全てに千日紅の貼り付けが完了。残るは子ども神輿用の真紅です。
大きな真紅と同じ要領で、4本ある芯に千日紅を貼り付けていきます。大きな千日紅の方は常に2、3人で行われていましたが、子ども神輿用の真紅は1人で作業を進めていらっしゃいました。
今回の集会所での作業は以上ですが、終了後、細工を担当されている清水さん宅を訪問し、過去の作品を拝見しました。
こちらは白虎と青龍です。
遠目で見てもしっかりモチーフが分かり、このように間近で見ると模様や体のパーツが作り込まれていることがわかります。
保管されている材料も拝見しました。清水さんは材料を小分けにしてきっちり保管されているため、見せていただくとちょっとしたコレクションのようでした。たくさんありますが、これでもまだ全てではないそうです。
こちらの箱は栗などの秋らしい素材が集められています。
こちらには旅先の道の駅で発見した珍しい食材や、細工用に干して保管してあるパイナップルの皮(右上)、ほおずきや松ぼっくりもあります。
豆や種子、ナッツなど細々とした素材は種類ごとに分けられています。レンズ豆やとうもろこしなどもありますが、初めて見るものが半分以上を占めています。
こちらは乾燥させたユーカリの葉です。青みがかった素材は珍しく、茶色がかった素材が多い中では目を惹きます。
清水さんはもう20年ほど細工作りを担っておられるそうで、各年の作品をアルバムにまとめておられました。清水さんにお話をうかがったところ、「初めの頃は素材に手を加え過ぎていた。今は手を加えるより、素材の形や質感を活かした作品になるように心がけている」とおっしゃっていました。
今年のお神輿に使う細工の途中経過も見せていただきました。先日拝見した上田さん・竹尾さん宅で細工と比較してみても、作品には作り手それぞれの色が強く表れていると感じます。
本日はここまで。次回の夜なべは9月19日です。
9月15日(金)「梅鉢」と「燈芯」
こんにちは、本日は中塚がお伝えします。
久方ぶりの心地よい涼しさも束の間、また辛い暑さが京都に戻ってきました。
あれだけの量があった千日紅。毎晩数人がかりで作業をしても、すべてに糸を通すには10日ほどかかりました。まさにコツコツ進む作業でした…
先日紹介した稲穂を整える作業ですが、この作業でも多くの稲を扱います。一人ではとてもできないことですが、互いに協力し合い、時折世間話もしながら作業を進めるのであっという間に時間が過ぎていきます。
【写真①】縁側には大量の稲が…
さて、この日私は「梅鉢」の製作を担当されている会員の方にお話を伺いました。梅鉢は北野社の梅紋を縄で作ったもので、神輿のさまざまな箇所に飾られます。
この日行っていたのは、梅鉢の5つある輪っかを隣同士で結びつけ、梅の形に成形していく作業です。
【写真②】糸でくくる前
一本の縄からこのような複雑な形を作れることが驚きです。見ているだけではどういう構造なのか全くわかりません…
梅鉢は全て同じというわけではなく、大きさにも大小があり、4つないしは5つの用途があるそうです。全部で約150個作られます。この数をお二人で作られたというので驚きました…
【写真③】梅鉢の中心部分
【写真④】糸で括る
この糸で輪同士を結び付ける作業を体験させて頂きましたが、まさかの大苦戦でした…私が1か所括る間に、隣で同じ作業をしている望月さんは、3つ、4つと梅鉢を完成させていました…人にはそれぞれ得手不得手があるのでしょう…私もなんとか梅鉢を1つ成形することができました。
梅鉢はこれで完成というわけではなく、更にここから装飾がつきます。カボスや稲穂などを付けるそうです。今後どのようになっていくか注視したいですね。
【写真⑤】成形後の梅鉢
梅紋は他にも至る所で確認することができます。この日はちょうど瓔珞に関わる作業が行われていたので瓔珞にある梅鉢紋も見せていただきました。
【写真⑥】瓔珞の傘
【写真⑦】傘に取り付けられた千日紅
また、この瓔珞の傘に取り付けられている「燈芯」も拝見しました。燈芯は一本一本が非常に軽く、スポンジのような感触です。瑞饋神輿保存会では西陣の染め物屋さんに燈芯を染めてもらっているそうです。こうしたパーツひとつをとっても、瑞饋神輿と職人の結びつきを感じます。
【写真⑧】紫に染められた燈芯
梅鉢のような複雑な構造をもつ縄の結び方が現在まで伝承されていることに感慨深く思いました。
また、燈芯を職人さんが染めていることも驚きでした。歴史のある瑞饋神輿と周辺地域の職人との関わり方についてもっと詳しく知りたいと思いました。
本日はここまで。
9月14日(木)真紅作りも佳境です
こんばんは。9月14日の夜なべの様子を、今回は望月がお伝えします。
新しく収穫した千日紅が茣蓙で干さていましたが、今日はそちらを使って糸通しを行いました。
新しい花は大ぶりのものが多く比較的柔らかいので、芯を捉えやすく、糸通しも捗ります。作業に慣れてきたこともあり、時間を測ってみたところ15分で1回分(約3m分)を作ることができました。
新しく摘んできた千日紅も、今日の作業が終わる頃にはたったこれだけに。糸通しの作業はもうほとんど完了です。
真紅も2本が出来上がり、残り2本となりました。紫の地に「天満宮」の白い文字が映えます。
残りの真紅でも白の千日紅の貼り付けが進められています。
この真紅の中に自分が摘んだもの、糸を通したものがあると思うと感慨深いです。
綺麗に切り揃えられた千日紅は、まだこれだけ残っています。これらは子ども神輿の真紅に使われます。
こちらが子ども神輿の真紅の芯です。比べてみると子ども神輿用はかなり小さく、片手で掴めるほどの太さです。瑞饋神輿の真紅の完成後はこちらに取り掛かります。真紅作りは大詰めです。
小冠の修復の様子も拝見しました。
側面の修復が進んでいます。
これでまだ完成ではありませんが、麦藁細工が艶々と美しいです。
一昨日中塚さんが紹介された稲穂の選別作業も体験しました。
選別した稲穂はこのように揃えて吊るされます。豊穣を祝うお祭りに相応しく、黄金色の稲穂がとても美しく見えました。今年は猛暑のため稲の生育が早く、刈り取りも前倒しで行われたそうです。
夜なべは明日も続きます。本日はここまで。
9月12日(火)稲を整える
こんにちは、今日は中塚がお伝えいたします。
この日、集会所では新たな作業が始まりました。入江さんの田んぼで収穫された稲が集会所に運び込まれており、そこから良質な稲を選定する作業を行いました。稲に付いている細い葉を落とし、穂の状態があまりよくないもの、黒かったり、白く中身が無いもの、穂が十分成長していない稲をよけていきます。
【写真①】積まれた稲(写真右下の稲のような状態にします)
【写真②】葉を取り除いていきます
【写真③】中身が入っていない穂
【写真④】黒く変色したもみ
入江さんによると、白いもみは、スズメや虫に食べられてしまい中身がスカスカの状態で、黒いもみはカメムシにやられてしまったものだそうです。
また、今年の夏は雨が少なく気温が高かったため、稲の収穫を例年より10日程度早めたそうです。「それ以上収穫を待ってもいい状態にはならない。」「もみの大きさは全体的に小さめ。」(入江さん談)
この作業は6人で行い、シンプルな作業ですが、稲の数は大変多く、丁寧さが求められました。
【写真⑤】ある程度の数で束ねる
【写真⑥】竿に吊るして保管する(竿の両端には「ネズミ返し」がある)
神輿に使用する農作物の量、質、収穫時期は、気候などの自然条件に大きく左右されます。毎年全く同じものができるわけではなく、決まったタイミングで収穫できるとも限りません。しかし、夜なべは例年、同じ時期に行われます。「今年はこのような状態だから、こうしよう」という話し合いを重ねながら瑞饋神輿の準備は進められます。そこには保存会のみなさんの柔軟な対応と受け継がれてきた知恵を見て取ることができます。
この日選別を経た稲は、次の段階では決まった本数に束ねられ、最終的に真紅の装飾として取り付けられます。
【写真⑦】白の千日紅で表現される「天満宮」
今回の作業では多くの稲を使用しました。その稲の生産者である入江さんに保存会の歴史について教えて頂きました。
【写真⑧】一番右が入江さんのご祖父様(昭和20年代)
【写真⑩】(左から)昭和8年、32年、58年撮影の保存会の集合写真
集会所にはたくさんの写真が飾られています。入江さんのご家族は代々保存会に参加されており、昔の保存会の集合写真にもご親戚がたくさん写っています。西之京で暮らし農業をされている入江さんからもっとたくさんお話をうかがいたいと思いました。
今日はここまでです、それでは。
9月11日(月)夜なべも7日目になりました
こんばんは。今回は望月が9月11日の夜なべの様子をお伝えします。
本日で夜なべも7回目を迎え、そろそろ折り返しを迎えます。
千日紅もこの通り、かなり少なくなっています。千日紅は糸を通す際、一定の大きさと太さがあり、白くなり過ぎていないものを選びます。今では条件に合うものがかなり減ってきたため、適当な花を探すのに一苦労です。
今夜は会員さんがご自宅で育てた新しい千日紅を持ってきてくださいました。
摘んでから時間が経っていないため、水分が抜けておらず、花自体も柔らかい状態です。
左が以前摘んだもの、右が新しく持ってきていただいたものです。乾燥する前はこのように、より赤みがかった鮮やかな色をしています。
真紅は2本目が巻き終わりました。
残る2本も作業が進んでいます。
千日紅の糸通しの後は、小冠の修復作業を見学しました。
正面の修復が完了し、
側面部分の修復に着手されています。
まず紙を使って側面部分の型を取っていきます。
麦藁を貼った和紙を型に合わせて切っていきます。
さらに、小冠の形に合うように折り目をつけます。
小冠を神輿に固定する際、留め具を使うそうですが、麦藁を貼り付けると留め具を通す穴が隠れてしまうため、穴あける作業が行われました。
屋根を葺いた後、ずいきの上に金具で固定するそうです。
今回は「萬燈祭」のお話を少しだけうかがうことができました。北野天満宮では、菅原道真公の没後50年ごとの節目に「大萬燈祭」、その間の25年周期で「半萬燈祭」が行われるそうです。前回の大萬燈祭でずいき神輿を飾った際は、ずいきの季節ではなかったため、長いお麩を代用し屋根を葺いたそうです。しかしお麩は脆いため、何本も折れてしまったそうです。
先日、上田さんと竹尾さんのお宅に伺った際にも教えて頂きましたが、ずいき神輿に使われる農作物は、耐久性や褪色の早さなど、様々な条件を踏まえて選び抜かれています。
清水さんからも興味深いお話をうかがいました。
「瑞饋神輿の細工では女性と坊主を表現してはいけない」という決まりがあるそうです。昔話をモチーフに細工を作る場合も、女性や坊主が登場する場面は避けて制作されるそうです。ただし、武蔵坊弁慶は武者なので表現しても良いとのこと。
また、近頃は昔話や童話の内容を知らない子どもが増えつつあるとうかがいました。子供たちに神輿を見て楽しんでもらうためにはどのようなテーマを選べば良いか、毎年悩まれるそうです。
本日はここまで。夜なべは明日も続きます。