10月4日(水)巡行の様子と振り返り/中塚

 こんにちは、中塚です。

 約1か月間の準備を経て、ついに巡行の日を迎えました。

 この日は朝9時から会員の皆さんが準備をされていました。神輿に取り付ける「轅」を台車に載せ、北野天満宮の御旅所へと運び込みます。

 

【写真①】轅を台車に載せる

 

 この轅を神輿の側面に取り付けます。縄で二本の轅の両端を結び、その縄に棒をかませ、回します。そうすると縄がよじられ、それに伴って轅が引き寄せられ、神輿本体に密着します。この状態で神輿の土台と轅を縄で括り、固定させます。縄の結び方はとてもユニークです。

 

 【写真②】轅を神輿に密着させる

 

【写真③】神輿と轅を縄でくくる

 

 轅を取り付けた神輿を今度は人力で台車に載せます。かなりの重量なので約40人がかりで運びます。巡行当日は30人程度の学生も参加し、力仕事に加わります。神輿を移動させる際、前後左右ではなく、東西南北で移動させる方向を指示している点が印象的でした。

 

【写真④】神輿を台車に載せる 

 

 神輿を台車に載せ、一旦集会所へ戻り昼休憩です。お茶とおにぎりをいただき、巡行時の衣装に着替えました。私も半纏と長ズボン、てぬぐい、地下足袋を貸していただきました。半纏の帯の結び方は柔道着と同じでした。地下足袋を初めて履きましたが、ふくらはぎまでのぴっちりした一体感と、ダイレクトに地面を感じる足裏の感触が非常に新鮮でした。

 12時半になり、神輿は動き始め、御旅所を出発します。私は神輿右側の前から二番目の位置で曳くことになりました。行列は総勢50名ほどから構成され、それぞれに役職が割り当てられます。私のいる轅の最前の役割は「神輿を揺らす」ことです。神輿は巡行ルートに沿って進みますが、道中において、御神酒を奉納されたお店・お宅の前を通過する際に神輿を揺らし、盛大に音を鳴らします。

 

【写真⑤】真紅に取り付けられている鈴

 

【写真⑥】轅両端にある鳴り鐶(なりかん)

 

 私の真横に鳴り鐶がありましたが、予想以上の大きな音で衝撃的でした。神輿の左側前方には、鳴り鐶を鳴らすポイントを指示する方がおられ、ポイントを通過する際に扇子を振り合図を出します。合図を受け、両轅の最前にいる二人は交互に轅を上下させ、神輿を揺らします。同時に同じ方向に揺らすわけではなく、交互に上下するように揺らします。

 鳴り鐶が鳴るタイミングを互いに図り合いますが、「息が合わないとうまく鳴らない」とのことでした。また、鳴り鐶を落とす際にも技術があり、「輪っかがあがったところから、3つ一気に落とすのではなくバラバラと落ちるようにする」とのことでした。アナログでシンプルな作りですが、たしかに、綺麗に落ちると「シャンシャン」ととてもいい音がします。私も何度かさせていただき、なかなかうまく鳴らすことはできませんでしたが、まわりの会員の方々からは「初めてにしてはよくできてる!」とほめていただき嬉しかったです。全体重を乗せないと全く揺れないので翌日は全身が筋肉痛でした…

 

【写真⑦】轅両端にある鳴り鐶の解説図

 

 巡行中は、「ほいっとー、ほいっとー」という掛け声を発します。音頭をとる会員の方がおり、音頭がとられ、行列が呼応します。神輿を揺らす際には「ほいっとーほいっとーほいっとー…」と連続的に掛け声をあげました。

 また、巡行中はたくさんの指示が飛び交いました。行列の先頭は「前引っ張れー、後ろ押せー」と声を掛け続けたり、「右曲がるよー」、「坂のぼるよー」と後ろへ前の情報を伝えたりします。神輿の曳き手にも「がんばれ!」などと励ましの声がかかり続けます。

 巡行中に限らず、神輿を移動させるときなど大人数で動く際には保存会の皆さんは掛け声によって正確にコミュニケーションをとられているのが印象的でした。あれだけ重量のあるものを全て人力で動かす、操作する際には「声」が不可欠ですね。お祭りに限らず、複数人でものごとを進める際に声を掛け合うことは大事だと思いました。

 約15kmほどを歩き通し、神輿をひたすら揺らし鳴らして、本当にくたくたになりましたが、西ノ京を練り歩き、北野商店街や上七軒では注目の的となり、そして北野天満宮に到着してお清めをしてもらった時には感慨深いものがありました。特に上七軒では道いっぱいにギャラリーが溢れ、大変盛況な雰囲気の中を歩くことができ、壮観でした。以上が巡行当日の様子となります。

 補足となりますが、先日(9月23日(土)細工づくりの見学 - ずいき日和)当ブログで紹介した清水さんの細工『リトルマーメイド』に関して、ご本人様の図解を掲載させていただきます。この細工は、本日の記事中【写真⑤】にも写っています。

 


【写真⑧】清水さんの細工(欄間)、材料解説

 

 
 続いて、この1か月のインターンの振り返りです。

 約1か月間、西之京瑞饋神輿保存会の集会所に出入りし、神輿の準備から巡行まで参加させていただいたことは、一生ものの貴重な経験となりました。保存会の皆さまには大変お世話になり、また温かい雰囲気で我々受講生を迎えてくださいました。

 神輿の装飾ひとつをとっても、まず収穫から始まり、そして丁寧に作業をひとつずつ進めていく。非常に時間はかかりますが、どの作業にも心がこもっていることが伝わってきました。今日、日常のあらゆる場面で単純化や画一化が進められています。しかし、瑞饋神輿をつくり上げる過程では、非常に多くのきめ細かい作業に地道に取り組まれていました。今回のインターンシップへの参加を通じて、丁寧にものを作り上げていくことの重要性を再認識することができました。

 そして、古くからの伝統を今後も継承していこうという、保存会の皆さんの並々ならぬ意志や思いを様々な場面で感じながら、その輪に入れていただけたことが大変有難く、またうれしく思いました。

 改めまして厚く御礼申し上げます。約1か月間、本当にありがとうございました。