番外編 桂馬・欄間作り

9月26日。ずいき祭りの日が近づいてきました。
この日は、保存会の荒田さんのお宅にうかがい、製作された桂馬と欄間について取材させていただきました。
引き続き、小川が報告いたします。

荒田さんの作られた桂馬は…


トンボです!
今までは動物を作られることが多かったそうで、虫は初の試み。
スーパーで瓢箪を見つけられ、その瓢箪を生かしたものを作れないかと考えられたのがきっかけ。
普段見かけないような材料で、それを生かした何かを作れないか。それを考えるのが、難しいところだそうです。

瓢箪は、トンボの頭と胸の部分に使用されています。
羽はへちまを乾燥させたもの。トンボの持つ、向こう側が透けて見える羽を思い起こさせます。

そして、複眼の部分は栗を2つ合わせてつくられたものです。
トンボの大きな目をどう表すか、蓮根の実や麩の実を使うなど試行錯誤を重ねられた結果、栗を使用されています。


桂馬の周囲を彩る千日紅は「紫色で上部から見て、白い星のように見える部分が綺麗なもの」を出来るだけ選ばれているそうです。


そして、欄間がこちら。


平家物語より「鵯越の逆落とし」
平家に奇襲作戦をしかけるべく、源義経率いる軍が断崖絶壁を駆け下りていく、その瞬間が見事に再現されています。
臨場感溢れる人形細工に、圧倒されてしまいました。
手前の白馬に乗るのが義経、奥の栗毛の馬を担ぐのが畠山重忠です。

荒田さんは故事成語や昔話など、古くから伝わってきた物語を題材にされることが多いそうです。
作り方や材料の選び方は、先に人形細工をされていた方から教わり、受け継いだもの。
残され、伝わってきたものを大切にする荒田さんの考えが表れているのかなと感じました。

荒田さんの人形細工には、カッパ(ずいきを乾燥させたもの)がよく使われます。


こちらの写真がカッパです。
この武者と馬たちも、ベースはカッパで出来ています。
武者と馬は、バラバラに作り後から組み合わせたのではなく、最初から繋がった状態で作られています。
武者の顔や、栗毛の馬もカッパが使用されています。ずいきと白ずいきの2種類のカッパの、表面と裏面を使い分けることで、これだけの色味の違いが出ます。
また、カッパだけでなくずいきの葉の部分も、畠山重忠の頭巾や崖の部分に使用されています。

色鮮やかな甲冑も、今回の欄間の特徴の一つです。
こちらは、和ろうそくの芯に使われている燈芯を染めたものや、城崎で手に入れられた色つきの麦藁で製作されています。


こちらが夜なべ作業でみかけた麦藁と、色つきの麦藁です。


同じ長さに切りそろえたものを、一つ一つ貼り付けられたのでしょう。作業が細やかです。
その他にも、同じ武者でも目の部分に使われる種が大きさに合わせて変えられていたり、髭の部分にキセル用のタバコの葉を使われたりと、様々な所に細やかさが表れています。


臨機応変さと柔軟なアイデアも人形細工には欠かせません。
荒田さんも、作業をされているうちに、馬に鞍や房飾りをつけるなどのアイデアを思いつき、随時付け足されていったそうです。最後まで修正と改良を繰り返されていました。
後ろの松の木も、最初は葉の部分を青海苔で描かれる予定だったそうですが、本物の松葉を使い、その松葉も2種類を使い分けるなど、より美しく見える方法を模索されたとか。
木の部分はぶどうの茎です。


松の木の隣の実のなる木は、ミニトマトの枝がそのまま使用されています。
じっくり見せて頂くまで気がつきませんでした…発想が素晴らしいです。


様々な種類の植物とアイデアで彩られた、荒田さんの欄間と桂馬。
こちらも是非お祭りの際にご覧になってくださいね!