番外編 桂馬・欄間作り2

こんにちは。小川です。
これまで様々な人形細工を取材させて頂いてきましたが、今回は清水さんの作られた人形細工を紹介させていただきます。

清水さんは、ずいきみこしだけでなく、こどもみこしの人形細工も作られています。
そのため、子供たちに興味を持ってもらえるよう、題材に人気のアニメやその時に話題になった作品を選ばれるようにされています。

今年製作されたこどもみこしの人形細工はこちらの2作品です。


1枚目は「ポケモンGO
今年の夏にスマートフォン用のアプリとして配信され、大流行したゲームですね。
ポケモンGOはしていなくても、ポケモン自体は知っているという方も多いのではないでしょうか。
こちらの桂馬はモンスターボールです。この半球の形は、風船に紙を貼り付け乾かすことで、型がとられています。
欄間の部分に描かれている2匹のポケモンは、それぞれ黄色と茶色がベースになっています。
しかし、同じ黄色や茶色の部分でも、使用する材料を変えることで、毛並みや細かな色の変化が表現されています。
また、腰板にあたる部分の2匹は、両方とも顔の下地にグレープフルーツの皮が使われていますが、表面(黄色)と裏面(白)を使うことで、まったく違う質感が出されています。


2枚目は「ファインディング・ドリー
こちらも子供たちに人気のディズニーキャラクターです。
注目すべきはやはり桂馬部分に描かれているドリーでしょうか。このドリーは、ナンヨウハギという魚なのですが、綺麗な青色をしているのです。
青色は自然界では手に入りにくいのですが、清水さんはパンジーの花びらを使うことで見事に表現されています。
欄間部分のタコは、ほおずきとししとうの赤が使われています。吸盤はえのきだけの笠を乾かして貼り付けられているのだとか。
腰板部分には、海の生き物たちの姿が。中央の2匹のラッコは、しいたけで作られています。


清水さんのお宅には、様々な種類の乾物や木の実、植物などが保管されています。
材料集めに協力してくださる方から分けて頂いたり、お店で購入されて集められています。
イメージに合うように、自ら乾物や押し花などを作って、作品に取り入れられています。
これだけの材料を、適材適所で使い分けることにより、バリエーション豊かな表現が可能となるのです。


木の実なども種類別に保存されています。松ぼっくりなどの特徴的な形のものは、そのまま使うだけでなく分解して細かく貼り付けたりすることもあるそうです。
形が面白くて拾ってきたが名前がわからない、という木の実も。ふんだんに使われて、人形細工が作られています。


ずいきみこしの桂馬は、今年が申年ということにちなみ


ワオキツネザル」がテーマになっています。
躍動感のある、今にも動き出しそうな姿をしていますね!
尻尾の黒い縞は、ねぎの種で作られています。白い部分のパンパスとあわさり、尻尾のふさふさした質感が際立っています。
手足の部分はずいきの皮です。こちらは白味を帯びた皮の色をしています。
ずいきには赤色を帯びたものもあり、色の使い分けが可能です。


赤ずいきが使用されているのがこちら。
欄間は、劇団四季のミュージカル作品「CATS」がテーマです。作品に登場する猫たちのうちの8匹が描かれ、それぞれの猫の特徴的な姿が的確にとらえられています。
写真の向かって左側にいる猫に、赤ずいきの皮が使用されています。これだけ色に差が出るのですね。
こちらの猫の胸元は、とうもろこしの皮が使われています。その下地になる和紙が赤色で、少し色が透けて見えるようになっています。
向かって右側の猫は、少し似たような見た目をしていますが、黒っぽく見える毛並みは焼きなすの皮、胸元はニンニクの皮です。
写真や、遠目で見るとわかりにくいかもしれませんが、このような見えにくい部分にも清水さんの工夫と心遣いが表れています。


よりよい人形細工やアイデアがうみだされるよう、失敗もしながら新たな試みをされている清水さん。
「子供たちだけでなく、自分も作っていて楽しめるもの」を追求されています。
昔から伝わってきたものに、その時代を反映させた新しいものがあわさり、次の世代に受け継がれていくことも、伝統のひとつの在り方なのかもしれません。


当日は、ずいきみこしだけでなく、こどもみこしにも注目していただければと思います。
以上、小川でした。